牛首紬の特長

 牛首紬の特長は、座繰りで手挽きした空気を多く含んだ柔らかな糸、丁寧に織り上げる打ち込みのしっかりした張りのある地風、そこから生まれる弾力性及び伸張性によるシワに対する抵抗力、玉繭独特の小節が浮き立つ表面の美しさ、紬織物と絹織物の両面を秘めた織り味と光沢、糊もたせをしないため優れた保温、吸湿、通気性、軽くてなじみよい着やすさ、等があげられます。また作業に使用する白山伏流水と作り人の心も忘れてはならないことです。
 昭和30年後半、牛首紬の産地が絶滅寸前の時期、白峰村は産業振興の一つとして養蚕業を奨励、その副産物として紬の生産が始まりました。しかし、衰退し京都の室町から名前の消えた紬の販路を広めることは大きな難問でした。その難局を救ったのが加賀友禅と牛首紬の出会いでした。呉服業界では普段着と云われた紬に、正式な衣装に染める加賀友禅を染め付けた斬新な発想は、格調高い紬に生まれ代わり準フォーマルの着物として新たな特長を加えました。また染色後も牛首紬の表示をする事も大きな特長となっています。

 織物生産には、その土地の気候風土が大切と云われます。白峰は絹織物に必要な湿度の高い土地であり、また四季の変化も素晴らしく物造りや人間形成の場としての環境に優れ、その上村人は信仰心があつく神仏が日常生活に同居しており、物造りに対する考え方も高度のものを持っています。白生地は染色されると織物の産地名が無くなり、染色者のラベルに張り替えられるのが普通です。牛首紬の白生地は加賀友禅や京友禅等、いろいろな染め技術を施しても、著名な作家が染色されても牛首紬の名称で売られています。

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